天然愛され彼女と…俺の生活。
哉魔屋くんは途中で止まる。

「…櫆っ!」

お願いっ!

行かないで…!

向こうは急に深くなって…凶暴なのがいるんだよ!

櫆は関西出身だ。

そんなこと地元でない限り知ることはない。

櫆っ!

あたしは海に躊躇なく飛び込んだ。

櫆は泳げないと言ってたのが嘘のように泳いでいる。

「櫆っ!行かないで!櫆っ!」

あたしは波を掻き分けながら、前に進む。

櫆はどんどんと離れていく。

どうしよう…!

哉魔屋くんの挑発に乗っちゃったんだ。

「…櫆っ」

あたしもクロールで櫆の後を追う。

でも…追いつかなかった。

あたしが深い一歩手前の時。

櫆が海の中に消えた。

「かはっ」

「櫆っ!」

櫆は何かに引っ張られている。

あたしは急いで泳ぐ。

「か、櫆っ」

嫌だ。

行かないで…!

あたしは櫆の手を掴んだ。

潜ってみると、クラゲと、ここらで凶暴な魚。

櫆の右足に噛み付いている。

あたしは右足に噛み付いている魚を、足で蹴る。

そして急いで、沖に向かって泳ぐ。

櫆を懸命に背負って泳ぐも…、どうしても進まない。

沈んでくる身体。

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