天然愛され彼女と…俺の生活。

『だ、だって!動かせますよ?』

櫆はそう言って右足を動かそうと試みるも…。

膝は曲がるものの…指が動かない。

目を見開く櫆。

あたしは驚きで、医者を見る。

『…分かって下さい。少しの間、入院してもらわなければなりません』

『…はい』

櫆の瞳は、怒りに満ち溢れている。

あたしのせいだ。

あたしのせいで、櫆は走ることがもう一生できないんだ。

きっと良くて人並みの速い人にしかなれない。

罪悪感で下を向く。

なんで櫆は泳いだんだろう。

なんで、あの日がいいって海に行く日を決めたんだろう。

なんで…いつも嫌なことがある時は…。

哉魔屋くん、アナタがいるの?


「…俺さ、少し外歩きたいな」

櫆はニッと笑う。

あたしは懸命に笑う。

きっと櫆の答えだ。

【笑え】

そう言ってるように思えるから。

櫆が『笑え』って言うなら…、あたしは櫆の為に笑うんだ。

好きだから。

ずっと側にいる。

だから、アナタから離れて行くことはしないで。

あたしもアナタから離れることはしない。

希望を少しでも持つんだ。

庭を歩くと…櫆はあたしをチラチラと見る。

< 58 / 60 >

この作品をシェア

pagetop