天然愛され彼女と…俺の生活。
『だ、だって!動かせますよ?』
櫆はそう言って右足を動かそうと試みるも…。
膝は曲がるものの…指が動かない。
目を見開く櫆。
あたしは驚きで、医者を見る。
『…分かって下さい。少しの間、入院してもらわなければなりません』
『…はい』
櫆の瞳は、怒りに満ち溢れている。
あたしのせいだ。
あたしのせいで、櫆は走ることがもう一生できないんだ。
きっと良くて人並みの速い人にしかなれない。
罪悪感で下を向く。
なんで櫆は泳いだんだろう。
なんで、あの日がいいって海に行く日を決めたんだろう。
なんで…いつも嫌なことがある時は…。
哉魔屋くん、アナタがいるの?
「…俺さ、少し外歩きたいな」
櫆はニッと笑う。
あたしは懸命に笑う。
きっと櫆の答えだ。
【笑え】
そう言ってるように思えるから。
櫆が『笑え』って言うなら…、あたしは櫆の為に笑うんだ。
好きだから。
ずっと側にいる。
だから、アナタから離れて行くことはしないで。
あたしもアナタから離れることはしない。
希望を少しでも持つんだ。
庭を歩くと…櫆はあたしをチラチラと見る。