恋するリスク
「みなさん、今日はどうもお疲れさまでした。では、カンパーイ!」

佐藤くんの上司である菱沼製薬のMR、島村さんの掛け声で、みんなは一斉にグラスを宙に掲げる。

私は一気に中ジョッキのビールを飲み干すと、空になったそれを机に置いた。

19時。

仕事を終えた医師や私たちは、とある和食料理のお座敷に集っていた。

長テーブルが2つ平行に並んでおり、それぞれ、医師グループ、看護師&事務グループに自然と分かれて座っている。

MRの二人は、まずは医師の先生たちに、と、ビールを注いだりあいさつをしたりと、さっきから忙しなく動いている。

そんな様子を眺めていると、肘をトントン、とつつかれた。

右隣を見ると、看護学校時代からの友人で同期の、柏木穂乃香が、私の顔を覗きこんだ。

「真緒、なんかあった?」

「え?なんで?」

「今日、ずっと怖い顔してるし。下の子たちも怖がってたよ。」

「うそ。本当に?」

「うん。真緒はキレイだからね、ちょっとムスッとしただけで、なんだか怖く感じるんだよ。」

「・・・あんまり、顔に出さないようにしてたんだけど。」



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