恋するリスク
「藤崎さんに、どう接したらいいんだろうって、だいぶ悩みました。

悩んで・・・知らないフリ、してました。」

「そう、だったんですか・・・。」

知らなければいいと、思っていたけど。

ずっと前から・・・気づいてたんだ。

「私、結構したたかなんですよ。

彼には、無邪気で純粋な女に見られたい。

でも、本当はそうじゃなくて、ものすごく嫉妬に満ちたことをしてしまう。

藤崎さんに対しても・・・嫉妬はありましたけど、

新人の私が仕事の出来る中堅ナースを敵に回してもいいことないですからね、

知らない、やっぱり無邪気なふりをしてたんです。

すごく計算高いんですよ、私。」

そう語る彼女の顔はつらそうで、ずる賢い女には見えなかった。

彼女は、一生懸命無邪気なふりをして、でも本当はそうじゃないって叫びたくて。

苦しくて、西村先生に、そして私に、どういうことって詰め寄って問いただしたかったのかもしれない。

そうできていたら。

相沢先生は、もっと気持ちが楽だったのかもしれない。

「藤崎さんの態度次第では、私も攻撃的になったかもしれないけど・・・

藤崎さんも、私に普通に接してくれましたよね。

・・・接して、くれようとしてた。動揺してるの、気づいたけど。」

ふふっと笑う。




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