恋するリスク
「藤崎さんはとてもキレイだけど、女優さんにはなれませんね。」

「動揺してるのも・・・気づいてたんだ・・・。」

「・・・はい。こういうのって、男の人が悪いのに、なぜか相手の女の人に嫉妬が向くじゃないですか。

でも、藤崎さんも感情抑えてるんだなって思ったら、私と同じなのかなって。

西村先生に振り回されてるもの同士。」

ビールをゴクゴクと飲みながら、相沢先生は私に視線を向ける。

「自分で言うのもなんですけど、私、ルックスも整ってると思うし、医者だし、総合病院の娘だし。

外見と肩書は完璧なんですよ。

でも、だから・・・自信なかったんです、自分に。」

「・・・え?」

予想外の言葉に、私は驚く。

「中身は、なんにもないんじゃないかって。」

愛らしい相沢先生の顔に暗い影が差す。

「俊介さんだって、私のそういう・・・外側の入れ物に惹かれてるんじゃないかって、

中身は関係ないんじゃないかって、いつも、不安なんですよ。」

西村先生を俊介さんと呼んだ彼女の、素の表情が見えた気がした。

「そんな・・・。」

相沢先生が、そんなことを考えていたなんて。

次の言葉が出てこない。
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