恋するリスク
うまく言えないけれど。

西村先生が、相沢先生の外見や肩書だけで、結婚を決めたなんて思えない。

オレ様な彼のことはよくわからないけれど、なんだかんだ情熱的な彼が、内面に魅力のない女の子を、一生のパートナーに選ぶなんてことはないと思った。

「自信、持ってください。

私が言うのも、なんかヘンですけど・・・。」

そう告げてから、やっぱりおかしかったかな、と、私はちょっと恥ずかしくなる。

「ふふっ。本当に。そうですね。」

相沢先生が、流れた涙を拭いて笑う。

それからもう一度、2人で顔を見合わせて笑った。

不思議な、穏やかな時間が流れる。

涙が落ち着いた頃、相沢先生は真っ直ぐに私の顔を見つめてきた。

「・・・藤崎さん、いまは、違う恋をしてるんですよね?」

「えっ・・・!?」

急に話を振られ、私はドキッと動きを止める。

「菱沼製薬の佐藤さん。」

「!!・・・えっと・・・はい、まあ・・・まだ、どうこうってわけじゃないんですけど・・・。」

しどろもどろに答える。

名前が出ただけで、私は相当動揺してしまうらしい。


(相沢先生にもばれてるのか・・・。)


私の気持ちが伝わっていないのは、佐藤くんだけかもしれない。


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