恋するリスク
穂乃香が連れて行ってくれたのは、商店街の中にひっそりと佇む、雰囲気のいい小さなバー。

キレイなバーテンさんに迎えられ、私たちはカウンターに腰を下ろした。

「しっぽり飲んで語りたいときは、だいたいここなの。」

穂乃香が言い、それぞれ好みのお酒を注文すると、彼女は私を覗きこむ。

「それで・・・早速だけど。真緒、西村先生とどうなってるの?」

「えっ・・・。」

まさかの質問に、私の身体は硬直する。

今朝別れを告げられたばかりなのに、もう、穂乃香の耳に入ったのだろうか。

私の不安を察したのか、穂乃香は言いにくそうに話を切り出す。

「いや・・・ほら、さっきの食事会の時、私、先生たちのところで飲んでたでしょ。

そうしたら、あと10分くらいでお開きってときに、佐野教授がやってきたじゃない?

そのとき、今度の4月に、西村先生の婚約者が医局に入るとか言い出して。

私、全く意味がわからなくてさ。

恋バナ好きの百瀬先生でさえ、固まっちゃって・・・。

周りはみんな、わけがわかんない状態だったよ。」

混乱気味の穂乃香に、私は「そっか」と言って下を向いた。

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