恋するリスク
接近

(うわ・・・っ!)


翌朝、鏡を見た私は、自分の顔に仰天する。

一晩中泣きはらした顔は、涙と化粧でぐちゃぐちゃだ。

クマも・・・ひどい。


(化粧くらい、落とすんだったな・・・。)


夜通し泣いて、泣き疲れて、睡魔が襲ってきたときには、朝の7時になっていた。


(なんで今日も日勤なんだろう・・・。

せめて準夜勤なら、ひと眠りしてから行けるのに。)


今更どうしようもないことを考えながら、なんとか支度に取り掛かる。

シャワーを浴びて、ジュースだけの簡単な朝食を済ませると、パパッと身支度を整えて、赤い自転車にまたがった。

職場までは、自転車で約10分。

入職時は寮に入る看護師がほとんどだけど、勤務年数4、5年をめどに、外のアパートやマンションに移り住む人が多くなる。

寮は便利で安くて魅力的ではあるけれど、仕事が終わってからも休みの日も、同じ病院の看護師が集まった寮で過ごすのは、やっぱりなんとなく休んだ気がしないのだ。

私もそんな例に漏れず、勤続4年を過ぎた頃、いまのマンションへと越してきた。

単純に、一人暮らしに憧れた部分も大きいけれど。
< 26 / 174 >

この作品をシェア

pagetop