恋するリスク
「ありがとうございます。」

このタイミングで今更私が否定するのも不自然な気がして、私は素直にお礼を言った。

「おう!また二人で来てよ。」

人懐っこい笑顔で言うと、大将は別の作業へ移っていった。

「ふふ。チャーシューもらえるなんて、ラッキーだね。」

「えっと・・・いや・・・。」

私は満足顔で言ったけれど、佐藤くんは少し困ったような顔をしている。


(あ、そっか・・・。)


「ごめん、ちゃんと否定すればよかったね。

本当の彼女と来るとき、来にくいもんね。」

「え?あ・・・いや、彼女なんていませんし。それは全然・・・。

ていうか、こちらこそすいません。彼女扱いされちゃって。」

「ううん。私は別に。チャーシューももらえたし。」

「そう、ですか・・・。」

相変わらず困り顔の佐藤くんを横目で見る。

その場の雰囲気で軽く受け流してしまったけれど、やっぱり悪かったかな、と私もちょっと反省する。

「でも佐藤くん、彼女いないんだね。いると思ってた。」



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