恋するリスク
前を向いたままの佐藤くんの表情は、いまいちよくわからない。

言われた言葉にドキッとしつつも、佐藤くんの真意を探る。


(私・・・みたいなタイプだから、私自身じゃないのかな??

からかったりはしないと思うけど・・・リップサービスの一環かな・・・。

とりあえず・・・「いいな」って思ってくれてるってこと・・・?)


ぐるぐると、頭の中は目まぐるしくフル回転。

考えても本音はわからない。

雰囲気から、好意的に思ってくれていることは事実のようで、やっぱりそれは素直にうれしい。


(年下のコに言われるとか、なんか気恥ずかしいけど・・・。)


照れ隠しをするように、コップの水をゴクンと飲んだ。


(ここは、「ありがとう」かな・・・。

いやいや、「そう」ってさらりと流す場面なのかな・・・。)


さまざまなことを考えていると、うれしさや恥ずかしさと同時に、そんないい女じゃないのにな・・・という自虐的な気持ちも顔を出す。

佐藤くんは私のことを、そんなに知っているわけじゃない。

西村先生の顔がちらついた。

私は、はじめから浮気相手に選ばれるような・・・そんな存在なのだ。

「うれしいけど・・・。

私、佐藤くんにそんなこと言ってもらえるような人じゃ、ないと思うよ。」

「え?」

褒めてもらえたのに、私は複雑な気持ちで、ダークな言葉をつなげていく。



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