恋するリスク
後ろ姿になった佐藤くんの背中が、一瞬、ピクリと動いた。

動揺で固まっている私の頭に、西村先生はポンと手を置く。


(!!)


「最近、佐藤くんとずいぶん仲がいいんだな。」

「・・・別に・・・。」

私はかがんで、頭の上の大きな手から、するりと身体を離していく。

「顔赤くしやがって・・・ムカつくな。」

「は!?赤くなんか、なってないし!!」

「ムキになるなよ。余計、頭にくるだろ。」

「頭くるって・・・。」


(なんでそんなこと言われなきゃいけないの・・・。)


「おまえが他の男と仲良さそうにしてると、ほんとムカつく。」

「・・・どこまで自分勝手なんですか。」

「どこまでも自分勝手だけど。」

私を見下ろして、オレ様理論を語りだす西村先生。

ナースステーションには、師長がいる。

聞いてないふりをしてくれているけど、きっと、私たちの会話に、疑問を感じているに違いない。

「・・・もう、西村先生には、関係ないでしょう。」

そう言って立ち去ろうとした私の腕を、西村先生はがしっとつかんだ。

「!」

「あるよ。好きな女のことだし。」

「!?わけ、わかんないんですけど・・・!」



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