恋するリスク
「・・・菱沼製薬の薬、オレの患者、全部他のところに変えちゃおうかな。」

にやりと、意地悪な笑みを私に向ける。

「ちょ・・・!何、馬鹿なこと言ってるんですか!!」

「困るんだ?佐藤くんの成績に響くし。」

「!!ち、違っ・・・!そんな勝手、患者さんに迷惑でしょう!」

叫ぶように訴えると、西村先生はため息をつく。

「・・・冗談に決まってるだろ。・・・あー、ほんとにムカつく。」

私の顔をのぞきこんだその表情は、本当に、怒っているかのようだった。


(婚約者を守ろうとしたり、私のことを好きだと言ったり・・・この人、本当にわかんない!!)


でも。

いまの・・・冗談だと言っていたけど。

もしも私が佐藤くんと付き合ったりしたら、西村先生は佐藤くんに、悪い感情を抱くかもしれない。

そうしたら・・・佐藤くんは、ものすごく仕事がやりにくくなるのではないだろうか。

考えて、私は途中ではっとする。


(・・・って、ない!ないないない!!)


佐藤くんと、付き合うとか!

年下だし。

別に、私はなんとも思ってない・・・はずだし。

佐藤くんだって、「私みたいな人」ってだけで、私ってわけじゃないんだし。

ぐるぐると考え込む私の頭に、再び大きな手が載った。





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