恋するリスク
「ちょっと、ヘルプを頼まれまして。」

「・・・百瀬先生でしょう。断ればいいのに。」

「そうもいかないですよ。」

笑顔でかわす佐藤くんは、どこか楽しそうで、嫌々やっている素振りはない。

百瀬先生の頼みは断りづらいだろうけど、そもそも佐藤くんにとっては、断る理由もないのかもしれない。


(まじめで人当たりがよくてマメで・・・。

本当、営業職に向いてるんだろうなあ。)


ポーカーフェイスっぽくて、いまいち読めないところもあるけれど。

同じ社会人として、年下ながら素直に尊敬してしまう。

「今日はうちも新人ひとり連れてきてますし。何かあったら声かけてください。」

そう言うと、ホテルスタッフかと見まごう頼もしさで、佐藤くんはその場を立ち去る。


(そっか・・・佐藤くんたちもいるんだ。)


そうわかったら、なぜだか少し安心する。

深呼吸をしてから椅子に座ると、師長が隣にやってきた。

「おつかれさまです。」

「おつかれさま。今回はまた大がかりだね。」

「ですね。菱沼製薬さんたちも、手伝ってくれてるみたいだし。」

何気なく言うと、師長は、ちょいちょい、と近づくように手招きする。

「なんですか?」

耳元を寄せると、内緒話をするように、師長はひっそりと声を出す。

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