恋するリスク
「そうそう、西村先生は彼女が高校生の時家庭教師をされていて、そのころからの知り合いだそうです。

大学に入ってからお付き合いが始まって、今は婚約中で・・・来年早々に結婚するんだったかな?」

教授に聞かれて、相沢先生は「はい」と、幸せそうに微笑んだ。

私は、やっぱり、という思いと、まさか、という気持ちが同時に膨れ上がっていく。


(高校からの知り合いって・・・。

大学生のときから付き合ってるって・・・。)


想像以上に長い付き合いであることに、私は驚き、落胆する。


(本当に私、一時期の浮気相手でしかなかったんだな・・・。)


その事実を突きつけられて、目の前の景色がぐにゃりと歪む。

私をよく思ってない人は、きっと今このことを知って、心の中で笑っているかもしれない。

西村先生はモテるから、きっと、そういう人はたくさんいる。

そうじゃなくてもきっと・・・私は好奇の目で見られているだろう。

悲しみとか、悔しさとか、恥ずかしさとか。

一度芽生えた自分の中のダークな感情は、さまざまなものがごちゃまぜになって、私をどんどん苦しみへと追い込んでいく。

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