恋するリスク
「ちょっと、藤崎さん、大丈夫?」

「らいろーぶれふ・・・。」

師長に肩を支えてもらいながら歩く。

歓迎会は無事終わり、みんな会場を後にして、ホテルのエントランスホールに集まっていた。


(私いま・・・呂律回ってないのかな・・・。)


95%の思考は停止しているものの、残り5%のわずかな能力で、自分はいま、かなり迷惑で恥ずかしい状態でいることを、なんとか認識している。

「困ったわね。これじゃ一人で帰せないし。

柏木さんもいないから・・・。

誰か藤崎さんの家知ってる?」

寮住まいの後輩たちや、既婚者で遠方に住んでいる先輩たちは、皆一様に首を振る。

「そうよねえ・・・。あとは・・・。」

言いながら、師長は出入り口付近をチラリと見たけれど、すぐにはっとしたように視線をはずした。

何気なく私も同じ方向へ視線を向けると、そこには、相沢先生と二人で楽しそうに話している西村先生の姿が目に映った。


(・・・そうだよね。)



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