恋するリスク
「あ・・・ううん。厳しいけど、やさしいってタイプ。頼りがいあるし。

でもほら・・・なんとなく、師長っていうと緊張しちゃうんですよ。」

長い付き合いだし、普段はそんなことはないのだけれど。

いまは、そういうことにしておこう。

「そうですか。よかった!師長さんの人柄って、新人の医者には結構重要で。」

相沢先生はふふっと笑う。

「でも、ほっとしました。

藤崎さんも、キレイで仕事が出来るから、近寄りがたいなって思ってたんですけど。

新歓で酔っ払ったりするなんて、ちょっと親近感わいちゃいました。」

「えっ・・・。」

「私もお酒好きなんです。今度飲みに行きましょうね。」

そう言ってうれしそうに笑うと、相沢先生は椅子を元の位置に戻し、仕事を再開し始めた。


(・・・そっか・・・。)


直感で、この人は本当に何も知らないのかもしれない、そう思った。

私のことを、そして西村先生のことも・・・疑ったりしていないのだと。

かわいくて頭が良くて総合病院の娘で。

これで性格もいいときたら、本当に、私が敵うところはひとつもない。

その無邪気さにほっとするのと同時に、どうしても嫉妬の気持ちは拭えない。

けれど。

こうやって私に接してくれるこの人には、やっぱり、何も知らないままでいてほしい。

そう思う気持ちは、今まで以上に大きくなった。



< 74 / 174 >

この作品をシェア

pagetop