俺だけみとけ!
―愛菜side―
「橘先輩…」
私は体育館の方から戻ってきた先輩に声をかけた。
今日、ちゃんと気持ちを伝えるんだ。
片思いだって、本当はわかってるけど…
告白してキッパリ振られないと何だか前に進めなくなる気がした。
未練が残るっていうか…
『どうした?』
ドキドキするな!!
これから前を向くために!
キッパリ振られてやるんだ。
私はスカートの裾をキュッと掴み、俯いた顔をあげて先輩の目を見た。
「私、先輩の事が好きです。
でも、片思いってわかってるので
私をキッパリ降って下さい」
……。
絶対、こいつ馬鹿だって思われてる。
こんな気持ちの伝え方ないよね…。
変だってわかってても、私にはあぁいうしかなかったんだ。
『ごめんね…。
でも、愛菜ちゃんの真っ直ぐな気持ちすごく伝わってた』
「え…」
先輩は笑って胸のところを親指で指していた。
この笑顔がずっと好きだった。
毎回部活に行くたびテンションが上がって、自分の気持ちがだんだん抑えきれなくなっていたのを覚えてる。
でも、この笑顔をもっと照らせるのは私じゃないんだ。
『愛菜ちゃんって強いね?』
「どうしてですか…?」
『だって、泣かないから…』
確かにそうだ。
私、泣いてないや…
きっと心の底では泣きたいのに、心が麻痺したように泣けないんだ。