俺だけみとけ!



部室に戻ると愛菜ちゃんは自分のバンドメンバーのところへ行った。



『何、緋色何かあった?』




その様子を見て察した悠が小声で言ってきた。




『告白されて、振った…』





口で言うのは軽々しく聞こえるけど、実際はすごく重い言葉。


振られて、最後に笑ってたんだぜ…。


辛いはずなのに…――





『お前、愛菜ちゃん泣かせてねーだろーな?』





りょーの低い声が聞こえた。


自分が好きな子を泣かせられるなんてたまったもんじゃない。


そういうふうに聞こえた。




場の雰囲気が一気に静まる…――





『泣かせてない。
今は、まだ…』





りょーは『ならいい』と言い残し、ドラムのスティックを持った。


ごめん……。


心の中ではそう重ったが口には出せなかった。






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