俺だけみとけ!




何も言わずに俺は愛菜ちゃんの側に行った。


顔をよく見ると目が腫れてた…




そして、震えてる愛菜ちゃんを抱き寄せた…―




俺には何もしてあげられない…


こうしてあげる以外。





「先輩…」




愛菜ちゃんの声が胸にあたる…――




『大丈夫だから…』




その一言で再び泣き始めた愛菜ちゃん。


ずっと、部活中我慢してたんだ。


泣いたら緋色に申し訳ないって…




『ごめん、見てたんだ』




俺は休憩中に自動販売機でジュースを買ってるとき、たまたま見えたんだ。


何かと思って近くに行ってみると、愛菜ちゃんが緋色に告白して振られた場面だった。


俺はその様子を見てられなくてすぐ部室に戻ったけど。




「私、バカですよね…」


『え?』


「自分で降ってくださいって言ったくせに、振られて泣いてるなんて」





愛菜ちゃんの手がキュッと俺のシャツを掴む。




『ねぇ、俺じゃだめ?』


「へ?」





本当は愛菜ちゃんが告白する前に、俺に振り向かせたかった。


そうしてたら、愛菜ちゃんが悲しむ事なかったのかな?


だけど、それはなんか違うかな。



愛菜ちゃんを見る度、どんどん好きになってく自分がいるんだ。


自分の気持ちに嘘はつけないから。






『俺、愛菜ちゃんが好き!』


「えっ!?」





涙なんてすっかりどっかに消えて、びっくりした顔で俺を見ている。


告白のタイミングまでグダグダな自分が恥ずかしいけど、これが今の俺の精一杯。




『い、いやならいいよ』


「いやじゃないです。
橘先輩に言われて、気になり始めたんです」


『緋色に?』




なんであいつが…













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