俺だけみとけ!
「やっぱ外は寒いね…」
赤チェック柄マフラーをして寒そうに手を摩っていた。
『手、貸して』
俺は明里の左手を握って、自分のブレザーのポケットに入れた。
冷たい手…
「ひぃの手温かいと思ったらカイロか♪」
『もうそんな時季』
「ん〜じゃぁはい!」
ポケットから手を出して明里は自分のマフラーを俺の首にも巻いた…―
そしてまた俺のポケットに手を入れ、ポケットの中で手を繋ぐ。
明里は満足そうに笑った。
『明里の臭い…』
「香水じゃないかな?
確かいちごの香りだったっけ」
俺達、本当に付き合ってんだよな…
なんか昨日今日じゃ実感わかない。
ついこの前までアイツの隣にいた明里が今は俺の隣に居るんだ。
不思議な感じがする…――
「そう言えばこんな事、先輩にはしてなかった」
『へ?』
「先輩と付き合ってても私、キスしかしてなかった。
デートは全てドタキャンされてたんだ…」
嘘だろ…
それなのに明里、毎日楽しそうに笑って過ごしてたのかよ…
明里…
「私、ひぃといろんなところ行きたい!」
『あぁ』
もう明里はアイツを見ていない。
それがわかれば十分だ。