乙女たるもの恋されろ!
会場にいる全員の視線が、高大が指し示す方を辿る。何故か嫉妬や羨望の熱気の入り混じったその大勢の視線が、わたしとエリナ部長にぶつかってそこでぴたりと止まる。
「……なんなの」
あからさまに敵意剥き出しの女子たちの視線に、怯えたようにエリナ部長がわたしに身を寄せてくるから「大丈夫です」といって守るようにこのひとの腕を掴んで支えた。
『あれって』
『だからあれ。あれでいいや』
高大はこちらを向いてもう一度言った。
『あれって。あのブルーのドレスの素敵なおねえさま?うわー広海ってば超面食いじゃん』
ヒュウと冷やかすように口笛を吹かれ、エリナ部長がぎゅっとわたしの手を握ってきた。
肉食系といわれつつも実は部長が純愛ものの少女漫画が愛読書だってこと知ってる。こんな金持ちぼんぼんの余興みたいなことにほんとはすごく乙女でかわいい部長を巻き込んでなるものか。
わたしもぎゅっと部長の手を握り返して高大を睨みつける。と目が合うとなぜか高大が笑ったように見えた。それもなにか苦いものを含んだような顔で。