乙女たるもの恋されろ!
「渋谷くん、プレゼント受け取ってもらえないなんて気の毒ね」
「しっかし嫌味だよな、どんな相手も食い放題のくせにあえてチョイスがアレとか」
「馬ァ鹿。美人はもう食い飽きてんだろー、高大さまは」
「てか、なに真に受けてんだよ。どう考えても本気で手ぇ出すわけないじゃん、ギャグだギャグ」
「分かってていってるんだっつの」
「でも高大案外本気だったんじゃん?非モテ系女子の処女貰ってやるって。やさしいボランティア精神っての?」
「えーそんなボランティアだったらわざわざ高大がやんなくても俺やっちゃうのに」
「おまえ、ああいうの趣味なのかよ?」
「だからボランティアならまあ許容、的な。でもああいう処女ってめんどくさそーか」
「確かに。重そうだよな、責任とって結婚して~とか言われちゃうんじゃん?」
「なんだよそれ、やっぱやーめた」
「やだぁひどーい」
「もうっ。さすがに言いすぎじゃなぁい?かわいそうだよ上野さん」
どの声に含んでいるのもほんのちいさな棘程度でしかない悪意だ。ひとを傷つけるほどじゃなく、ほんのささやかな、刺さっても痛いと思うよりわずらわしいなっておもうくらいの。
わたしが傍にいるのにとても愉しそうに言いたい放題言っているのも、ただ面白がってるからだ。でもわたしに聞こえているのに。いや、だからこそあえて聞かせているんだ。
それに気付いた途端。どこに刺さっているかも分からないくらいちいさなちいさな棘なのに、それがたくさん自分のいちばん弱いところに突き立っていくのだけは分かって。