乙女たるもの恋されろ!

「え?今こっち見た……?」

隣にいるエリナ部長がちょっと興奮したように言ってわたしの肘を引っ張る。……馬鹿じゃないのかわたし。今高大と目が合ったような気がしたのは、どう考えても気のせいに決まってる。こんなに綺麗な人がいるんだもん、高大は部長みたんだってば。

『ほんとにないの?』
『ないって言ってるだろ』
『えー。盛り上がらないな。じゃあさ、これはどうよ』

渋谷くんは得意げな顔になると、左手を高々を掲げた。

『皆さん、これなんだかわかる?』

わたしたちは遠目だから分からなかったけれど、前に固まっていた女の子たちから「鍵!」と声が上がる。

『そう。これはここ帝宮ホテルのジュニアスイートのキイでーす。これはオレたちからのプレゼントね。ちなみにスイートじゃないのは勘弁、さすがに高校生じゃ手が出せないもんで』

そういって胡乱な目をする高大の手元にキイを落とす。

『春人?なんだよこれ』
『まあまあ。こっからが贈り物のミソでね。では広海くん!』

渋谷くんは大げさな身振りで会場に向かって手を差し出す。


『今日この会場に来ている女の子の中から、誰でも好きな子選んで仲良くジュニアスイートに宿泊しちゃってください!』


渋谷くんがそういうと、会場がきゃーという黄色い声に染まる。


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