椿の氷
「ハァ…!
ハァ…!」




五分もせず、私は地に手をついた
強すぎる
ただの硬式テニスでやっていける強さではない
生半可な覚悟と根性では、彼らと対峙することも出来ない
それ程に、彼等の強さは並大抵ではない

しかも、彼等はまだ全ての力を出していない
息も乱れず、汗もかかず
こっちは、一本目のサーブから、死すら覚悟したのに




「…最後の一球と行こうか、豹那」



時川さんがボールを構える
震える足を鞭打って、私は立つんだ

よければいい
でも、そんな中途半端は、嫌いだ
神経質な自分の性格が、けしてそれを許さない



パコ



ボールが打たれた
ラケットを、振りかざし…


「…!」



お、重い…!
あの細身にあわない、重い打球

でも、逃げない
絶対に、逃げはしない―――!



パコォッ





< 15 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop