椿の氷
あけた直後、俺の目には
いつも闇之の朱色を束ねている漆黒の髪紐もが入る
切れて落ちた様子もなく
しかし、数本の絡みついた生糸のような髪

「…間違いなく、闇之のもんだな」

朱色で、所々色の抜け落ちた其れ
無造作に束ねているには、とても惜しいもんだ
それは、昔から思っていた

しかし、今思うのはそうじゃない
部室の入り口に、何故あの女の髪があるのかだけ

嫌な仮説を、聡明な頭脳が生み出す
言いようのない不安に駆られ、俺は足を早めた



「っ、闇之!
闇之、どこに行った!」


昔みたいに、かくれんぼだったらいい
ひょっこり出てきてくれ

俺は、もう、お前の―――




「闇之…?!」




―――傷付く姿なんて、見たくない

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