椿の氷
華奢な豹那の二の腕を絡めとり、自分の視線の高さまで上げる
よって、よく見えた
女特有の柔肌は白雪を散りばめたように滑らかで、きめ細かい
形のいい爪は、少しのびていた
緊張しているのか、細い指が小刻みに揺れている


「綺麗な手をしてんな
やっぱ、元が良いからだ」

「は?
元が良い?
何をいって…」


怪訝な表情の豹那は、一刻も早くの解放を望んでいる
冷たい女だ
もとから冷たいが
冷たい豹那の手
そうだ
たしか、こいつは低体温症だった


「お前が、綺麗ってことだよ」


「ぅ…!」

< 27 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop