椿の氷
八重歯が、豹那に食い込む
溢れ出た柘榴の鮮血
一滴たりとも、こぼさない
甘味な毒のようなそれを、口に広めた


「んっ、ん…!」


肌を吸われてくすぐったいのか
感じてしまっているのか
俺から逃げようと身をよじる豹那
体も力も、当たり前な話
俺の方が上だ
隙間を埋めるように抱けば、籠の中の鳥
渇いた喉が、歪な欲で潤う



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