椿の氷
「時川さん…」



話し終えて、俺は彼女の顔を押さえた
俺の胸に押し付け、逃がさない
軽蔑されるかもしれない
それが怖くて堪らない
今までなら、きっと抱かなかった感情
深紅の記憶が震える


「…私は、貴方に何も出来ない


…でも
時折なら、貴方に私の血を提供出来る」




度肝を抜いた
予想していた答え
その斜め上

何故だろうか

舞い散って地面を彩る椿と彼女が重なる
胸が高鳴っている

俺は、この子の
その言葉を欲していたに違いない


「…まいったよ」





君には
勝てそうにない

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