いつでも一番星
現にクラスメートだというのに、ナツくんとは会話をしたり挨拶をしたりという記憶がほとんどないぐらいだもの。
そんな状態で、相変わらず眺めているだけ。
いくら近づいているように見えても、近すぎる人気者に緊張していても。
結局ナツくんは、憧れの人なんだ。
「絶対、なにも起こらないと思うけどなぁ」
「いやいや、そんなのわかんないって。……まあ、あれだよ。もしナツのことを好きになったら、遠慮なく言ってね。野球部マネージャーとして、ナツとの仲を取り持ってあげるからさ!」
茉理ちゃんは頼もしい声でそう言った。
ウインクをしているつもりなんだろうけど、下手なせいで顔が引きつって見えるのが残念。
でも、もしもわたしがナツくんを好きになったら。きっと茉理ちゃんは、全力で応援してくれる。
そんな優しさが伝わってきて、とても温かい気持ちになった。
「うん、ありがとう。でもきっと、そういうことはないと思うけどね」
そう言ったところで、ちょうど教室の前に着いた。
今日も、緊張の1日が始まる。
☆★☆
すごく、姿勢が綺麗だなって思った。
立ち姿も、マウンドで白球を構える姿も。
授業中の、座っている姿も。
どんなときでも、真っ直ぐ何かを見据えているような。
そんなナツくんの綺麗な姿勢を見るのが、好きなんだ。
「……であるからして、西洋と東洋における美学は異なる。それはつまり……」
6時間目の、現代文の授業。
まだ授業開始のチャイムが鳴ってから、15分しか経っていない。
今は渋い声の男の先生が、小難しい評論文を音読しているところだ。