いつでも一番星


すらすらと文章を読み上げる低音は、結構落ち着くもので。
教室に並んでいる大小様々な頭は、すでにほとんどが俯いたり机に伏せられていた。

わたしにももちろん、睡魔が襲いかかってくる。

教科書の文章を追わずに胸元まで伸びた髪の毛の先をいじっていると、暇すぎてあくびが出そうになった。

だけど先生に見つからないように、慌ててそれを噛み殺す。

そして目尻に涙を携えたまま、目の前の大きな背中を感心しながら見つめた。

肩幅が広く、しっかりとした背中。
出っ張った肩甲骨が、紺色のカーディガン越しに主張されている。

ナツくんは真っ直ぐその背中を伸ばしたまま、首を少しだけ下に傾けていた。

きっと、教科書の文章を先生の声に合わせて追っているのだろう。
その真面目な姿は、見れば見るほど綺麗だと思えた。

……どうしたら、こんなにも綺麗な姿勢になれるんだろう。

ナツくんの真っ直ぐで無駄のない整った姿勢を見るたびにそう思う。

ナツくんの真似をして、背筋を伸ばして先生の話を聞いてみるけれど、すぐに疲れてしまう。
わたしの背中は、簡単に丸みを帯びた。

きっと、見た目だけじゃないんだろうなぁ。

ナツくんの姿勢が綺麗に見えるのは、単に背筋が真っ直ぐだからじゃない。

ナツくんの物事に取り組むときの心の芯が、真っ直ぐで揺るぎないから。
だからこそどんなナツくんも、かっこよく見える。

ナツくんの姿勢が綺麗なのは、心が強い証拠なのかもしれない。

隙さえ感じさせないその姿には、尊敬しちゃうよ。


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