いつでも一番星


悪い考えを浮かべ始めるときりがなくて、あれもこれもと不安ばかりが増えていく。

ナツくんが今までわたしに見せてくれた笑顔を、すべてが偽りだなんて疑いたくない。
でも、すべてが本心のものなのかもわからないんだ。


ナツくんの笑顔の意味を、完全に理解できていない。

それはそのぶんだけ、わたしとナツくんの間に距離があることを示しているようで……。

改めてこの恋の厳しさに直面したわたしは、複雑な思いを抱えながら、上の空でみんなの会話を聞き流していた。



 ☆★☆



「わあっ、かわいいー! こんなかわいいものを作れるなんて、雫ってほんと器用だよね!」


わたしが文化祭での家庭部の展示会のために作った、“動物たちのお茶会”。

ニードルフェルトのマスコットとオブジェで演出したそれを見て、茉理ちゃんは笑顔でさっきの言葉を言ってくれた。


「全然器用じゃないよ。結構失敗して誤魔化したところもあるし。……でも、ありがとう」


目の前で言ってくれた褒め言葉はわたしにもったいないぐらいのものだけど、やっぱり褒められるのは嬉しい。

にこにこな笑顔で何度もかわいいと言う茉理ちゃんを見ていると、頑張って作った甲斐があったなぁって思えた。


わたしたちが今いるのは、家庭部のいつもの活動場所である被服室。

今日はここが、家庭部の展示会場になっている。

さっきみんなで話し合った結果、次の目的地がここになったのだけど……。

この場所の名前を挙げたのはわたしではなくて、何とナツくんだった。


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