いつでも一番星


ねぇ、ナツくん。
いつもありがとう。

ナツくんのおかげで、毎日とても黒板が見やすいよ。

こんな些細なお礼さえ直接伝える勇気も持っていないわたしだけど、いつでも感謝してる。

わたしのために丸めてくれた姿勢。
そこに隠れているきみの優しい気持ちをちゃんと知っているから、わたしはその丸まった背中も綺麗だと思える。

だからいつも、ひっそりとその背中に呟くの。

心の中だけど、何度もありがとうって……。



「いつもの漢字プリント回すぞー」


授業終わりのチャイムが鳴る直前。
先生は悪魔のような一言とともに、お手製の漢字問題が連なったプリントを最前列の人たちに配布した。

みんなはそれに小言を漏らしてざわめきながら、徐々に後ろの席に回していく。

自分の分のプリントが回ってくるのを待ちながら、ついついため息をついた。

……はぁ。嫌だなぁ、あの漢字プリント。

現代文の先生は、ときどきこうやって漢字の課題を出す。

そして決まって次の授業のときに、そのプリントの問題の小テストを行うんだ。

事前に問題の解答は用意してくれていない。

つまり小テストのために、課題の解答は何がなんでも正しく記入しないとまずいわけで。
嫌でも、面倒くさくても、辞書で調べながら解かないと小テストで痛い目に合う。

先生としてはその面倒くさい過程を生徒にさせて、自ら学習してもらうのが目的なんだろうけど……。

生徒からすると、憂鬱なものでしかないんだ。

漢字は嫌いじゃないけど、課題や小テストとなると別問題だし。


< 13 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop