いつでも一番星
『俺、家庭部の展示が見たいな。家庭部ってことは、平岡さんの作品もあるんだよね?』
パンフレットに載っている校舎の案内図。
その被服室の部分を指差して、さらりとそう言ったときのナツくんを思い出す。
わたしはというと驚いてぽかんとしてしまい、ナツくんの言葉に頷くことにだいぶ手間取ってしまったんだ。
……だって、まさか。ナツくんの口から出てくるとは思ってなかった。
家庭部の展示が見たい、なんてこと。
そもそも、以前話したわたしの部活のことを覚えてくれていたことさえびっくりだ。
でも、驚く気持ちよりも嬉しい気持ちの方が大きかった。
わたしとの会話が、ナツくんの記憶の片隅に残っている。
それはナツくんからすればとても些細なことかもしれないけど、好きな人の記憶に少しでも自分の存在があるのは嬉しいことなんだ。
その小さなわたしの存在が、いつかもっとナツくんの中で大きくなってくれたらいいのになぁ……。
さっきまで落ち込みかけていた気持ちも、今はナツくんの言葉ひとつですっかり軽くなっていた。
好きな人の言葉や態度次第で、いろんな方向に傾いたり、上がったり下がったりするなんて。
恋心って複雑なようで単純で、それからいつも忙しいものなのかもしれない。
「俺も、平岡さんは器用だと思うなぁ。こんなに上手く作ってもらえて、この動物たちも幸せだろうね」
……ほら、また。
ナツくんの言葉で簡単に胸が高鳴って、自然と笑顔になっちゃう。
ナツくんの言葉は威力が抜群で、魔法みたいにわたしの心を踊らせてくれるんだ。