いつでも一番星


「いや、だって、前に言ってたでしょ? もっとナツに近づきたいって。どうやって近づけばいいのかって、悩んでたでしょ?」

「そりゃあ、そういうことは言ったけど……」


確かに以前、茉理ちゃんには相談したことがある。

ナツくんとの距離の縮め方について、自分ではちっともいい案が浮かばなかったから。

でもそのときは結局、ふたりで考えてもこれと言ったいい方法も特に浮かばなくて、相談もうやむやになって終わっていったのだけど……。

どうして今、いきなりそのときの話になるんだろう?

しかもそれとさっき言っていた告白に、一体どんな関係があるの……。

疑問ばかりが頭の中で交錯していると、茉理ちゃんが机の上を指先でとんとんと叩いた。
正確に言うと、ふたりの間にある机の上で開いていた、雑誌のとあるページを。

それはさっきからふたりで目を通していた、女子中高生向けの雑誌だった。


「ほら、もうすぐバレンタインだからさ。距離を縮めたいなら、告白するのが手っ取り早いんじゃないかって思うわけよ」

「バレンタイン、か……」


開かれているページに目が釘付けになる。


『意中の彼に近づくチャンス!』


赤やピンクで彩られたページの中で、でかでかと書かれているその文字。

茉理ちゃんが指先で叩いていたのは、バレンタイン特集のページだったんだ。

エプロン姿が似合っている同年代の可愛いモデルの女の子が、チョコレートケーキが乗ったお皿を持ってこちらに笑顔を向けている。

そのページでは、雑誌がおすすめするチョコレートのお菓子のレシピがいくつか紹介されているみたいだ。


「雫はお菓子作りも得意だし、バレンタインとか絶好のチャンスだと思うなぁ」


あ、これおいしそう……なんてことを上機嫌な声で呟く茉理ちゃんとは反対に、わたしの表情はだんだんとくもっていく。


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