いつでも一番星


バレンタインまで、あと1週間と少し。
この時期になると女の子はみんな、バレンタインに向けての準備で盛り上がる。

わたしだって、毎年そうだった。
どんな友チョコを作ろうかなって、レシピ本を見ながらいろんなチョコレートのお菓子に思いを馳せていた。

でも、今年は少し違う。
世間がバレンタインで盛り上がるほど、複雑な気持ちが膨らんでくるんだ。

もちろん例年と同じ楽しみっていうドキドキもあるんだけど、胸騒ぎのような落ち着かないドキドキ感も身体中に広まっていく。

好きな人がいるバレンタイン。片思いで迎えるバレンタイン。

……それは決して、楽しい気持ちだけでは過ごせない。


「……無理だよ」

「えっ?」

「いくらバレンタインでも……告白なんて、できないよ」


視線が下がっていく。
眼下に広がるバレンタイン特集のページは、ネガティブ思考で埋め尽くされているわたしには眩しすぎた。


「でもさ、近づきたいんでしょ?」

「……うん」

「じゃあ、頑張ってみるのもいいんじゃない? 今の関係を変えたいなら、告白するのもひとつの方法だと思うよ」


諭す茉理ちゃんの口調は、強制的ではなくやわらかい。
だからあくまでも、わたしの意思を理解した上で言ってくれているのがわかる。

わかっているから、その気持ちに応えたい思いだってある。

だけどわたしはまだ、そのアドバイスを受け入れられるほどの……告白できるほどの勇気は、まだ持ち合わせていない。

告白すれば、確かに関係は変わると思う。
けどそれは、必ずしもいい関係に変わるとは限らないんだ。

ただでさえ縮まらない距離が逆に広がってしまう可能性も考えると、勇気なんて到底出てこない。


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