いつでも一番星
「知ってた? ナツって、雫の前だとよく笑うんだよ?」
「笑うって……。ナツくんって、普段からよく笑ってない?」
ナツくんの姿を思い浮かべるときは、いつでも笑顔の姿だ。
無邪気に笑った顔や、目を細めて微笑む顔。
それから……心を許してくれたような、やわらかくて優しい笑顔。
「いや、笑ってるのは笑ってるんだけどさ。ちょっと、笑い方が違うんだよね。雫の前だけは。なんかこう……笑ったときの空気が違うのよ。気を張ってないっていうか、やわらかい感じで。他の女子とかの前だと愛想笑いに見えるような笑顔のときもあるんだけど、雫にだけは違うっていうか……。まあ、説明が難しいんだけどさ、その違った笑顔で雫のことを見てるのは確かだよ」
途中は考えるような口振りだったのに、最後には自信満々な様子でそう言った茉理ちゃん。
その茉理ちゃんの顔を見つめるわたしの胸は、忙しなく脈打っていた。
だって……気づいてしまったんだ。
茉理ちゃんが言っている笑顔と、わたしがさっき最後に思い浮かべたやわらかい笑顔が、同一だってことに。
以前初めてあの笑顔を見たとき、いつもとは違う雰囲気をまとったあの笑顔を、勝手に特別なもののように思っていたけど……。
あれはナツくんと親しい茉理ちゃんから見てもそうだと思うぐらい、特別な笑顔だったってこと?
しかもそれを見せているのが、わたしの前だなんて……。
「……っ、」
ぶわっと、熱い何かが身体中に巡り渡る。
恥ずかしさとときめきによる熱で、全身がドキドキと高鳴っていた。
勢いよく巡り渡った熱は一通り暴れ回ると、やがて少し落ち着きを取り戻す。
そして最終的には静かに、でも確かに、わたしの中心にぽっと炎を灯した。
温かな、優しい恋の炎を。