いつでも一番星


……どうしよう。

すごく、すごく……嬉しい。


あのナツくんの笑顔が頭の中に浮かんできて、ぎゅーっと胸が締めつけられた。

本人に確かめたわけじゃないから、決して確証なんかないけれど……。

期待してもいいかな?
少しはナツくんの心に近づけてるって。

あの笑顔はちゃんと特別だって、何かしらいい意味もあるかもしれないって、思ってみてもいいかな?

そう思うだけでわたし……ほんの少し、勇気を持てるから。


「~~っ! 決めた! わたし、ナツくんに友チョコ渡す!」


胸の前で両手で握り拳を作ると、力強い声で茉理ちゃんにそう宣言した。


自信なんて、いつもない。

だけどやっぱり、ナツくんの一番そばにいたいから。もっともっと、ナツくんの特別が欲しいから。

だから……わたしから近づくんだ。
どんなに想っていても、わたしが動かなきゃ距離は縮まらない。

わたしの一方通行の片思いなんだから、止まっていたら何も始まってすらくれないよね。

バレンタインの力を借りてでも行動しない限り、きっとあとから後悔だってしちゃいそうだ。


「お~、ついにやる気になったね! でもそこで本命チョコにしないのが雫らしいわ!」

「もうっ、茉理ちゃん!」


人がなけなしの勇気を振り絞った意気込みを愉快そうに笑われて、反抗するように頬を膨らませた。

ただ痛いところを突かれているせいで、それ以上返す言葉は見つからないのだけど。


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