いつでも一番星
……いいの。
とりあえず、チョコレートさえ渡せれば。
きっかけは何だっていいんだ。
ナツくんの心の中に、一時でもわたしの存在が入り込んでくれたらいいのだから。
友チョコ程度では大した効果は期待できないかもしれないけど、……印象には残って欲しいなって思う。
いつもわたしがナツくんに向ける視線に何かしらの想いが含まれていることを、ちょっとでも感じ取ってくれたなら……。
それだけで、嬉しくなるよ。
「よし! 渡すとなったら張り切って準備しなくちゃね! 雫、さっそくなに作るか決めようよ!」
「ははっ、茉理ちゃんの方が張り切ってるー」
「えー、だって雫がやる気になったんだもん。せっかくだから、いいバレンタインにしたいじゃん! ……あ、ほら、おいしそうなレシピがいっぱい載ってるよー」
力のこもった瞳で力説していた茉理ちゃんが、雑誌のページをぺらりとめくる。
わたしから見やすいようにこちらに向けてくれたページを覗けば、さっきまでの艶やかなページと違い、ポップな可愛らしいパステルカラーで彩られたページが眼下に広がっていた。
“おすすめ☆友チョコ特集”と題されたそこには、クッキーやトリュフなどの、大量生産がしやすいような友チョコ向けのレシピが掲載されていた。
茉理ちゃんが熱心にそのページを見始めるから、わたしも倣って一通りレシピの詳細を見ていく。
……やっぱり、友チョコとして渡すんだから。
気軽に渡せて、ナツくんにも気兼ねなく食べてもらいやすいお菓子の方がいいよね。
咄嗟に浮かんだのは、以前土曜日にナツくんと出くわした日のことだった。