いつでも一番星
あの日ナツくんがおいしいと褒めてくれた、オレンジパウンドケーキ。
あのレシピ改良すれば、バレンタインらしくチョコレートを使用したオレンジチョコパウンドケーキにもなる。
けどいくらおいしいって言ってもらえたからって、さすがに同じようなお菓子はまずいかなぁ……。
でも何となく、オレンジを使ったお菓子にしたいかも。
ナツくん、オレンジが好きって言っていたから。どうせならあの日知った貴重な情報を活かしたい。
そうなると何がいいかな?
思いついたのは、オレンジチョコマフィンにオレンジチョコブラウニー。
……ダメだ、似たような食感のものしか思いつかない。
どうせならもっと、食感を変えたい。
男の子だし、食べ応えがある方がいいかな……。
ナツくんが食べてくれるときの姿を想像しながら、頭の中に備蓄されているレシピをあれこれ引き出す。
その結果、ようやくひとつのレシピにたどり着いた。
……そうだ、あれなら!
「わたし、チョコバー作ろうかな。ドライフルーツとか、ナッツとか入れたやつ」
これならオレンジピールも使えるし、ナッツ類で食感も変えられる。
それに食べ応えだってそれなりにあるし、我ながらいいアイデアかも。
「お、いいねー。食べ応えもあっておいしそうだし、きっと喜んでくれるよ」
ぽつりとこぼした言葉に、茉理ちゃんは雑誌に向けていた顔を上げて賛同してくれた。
後押しの言葉のおかげで勇気が湧いてくる。
頑張るよ、の意味を込めて小さく笑みを浮かべた。
すっかり浮かれた頭の中にはチョコバーの完成イメージができていて、喜んでもらえますようにと祈った。