いつでも一番星
「平岡さん、おはよう」
寒さなんて吹っ飛ばすような、温かみのあるやわらかい笑顔。
そんな素敵な表情を見せてもらえて、胸の奥がきゅっと嬉しそうに鳴る。
だけどそれはそれでわたしの心臓をさらに暴れさせるから、緊張のバロメーターは振り切ったままだ。
「……っ、おはよう、ナツくん」
緊張で挙動不審になりそうな身体に頑張れとエールを送り、何とか挨拶を返す。
周りの喧騒でかき消されてしまいそうな声だったけど、ナツくんはちゃんとわたしの声に耳を傾けてくれていたらしく、微かに笑みを作って見せてくれた。
真っ直ぐ目を見て笑ってくれるその顔は、さっき見たものよりもさらにやわらかく感じる。
だけど今度はまともに見ても、不思議と緊張はしなかった。むしろ、安心する。
身動きできずに固まっていた心がふっとゆるんで、じわりと温かいもので満たされていく。
次第にそれがむず痒い恥ずかしさに変わっていくのを感じて、熱く火照った顔を見られないように俯いた。
……渡さなきゃ、ね。
少し落ち着いた頭で、ナツくんのために作ったチョコバーのことを思い出した。
予定通り、作ったのはチョコバー。
アーモンドやカシューナッツとクッキークランチで食べ応えがあるような食感にして、それからオレンジピールで程よい酸味と香りがつくようにと、いろいろ試して完成した自信作だ。
味見した限り特別まずいなんてことはなかったし、ナツくんだって喜んでくれるはず。
……たぶん、だけど。
「……、」
……ああ、ダメダメ! しっかりしろ、わたし!!
ネガティブ思考に入りかけてるよ!