いつでも一番星
慌てて肩からスクールバッグをおろす。
目にしたそれはナツくんが言うように、チャックが開いたままの状態だった。
しかも、全開。
これに気づかなかったなんて、本当に恥ずかしすぎる!
すっかり閉めたものだと思っていたけど、茉理ちゃんと横峰くんのやりとりを見るのに夢中になって忘れていたらしい。
かあっと頬が熱くなる。
すぐさまそれを隠したい衝動にかられるけど、諦めてチャックをきちんと最後まで閉める。
遠慮がちに、目の前のナツくんを見上げた。
「……あり、がとう。助かりました」
「いーえ。俺もよくあるんだよね、開けっ放しになってること」
えっ、ナツくんが?
思わずそう言ってしまいそうになるけど、驚きすぎてそれは声にならなかった。
だって、ちょっぴり意外だ。
ナツくんって何でも完璧にこなすというか、意識を張り巡らせているみたいな。そんなイメージがあるから。
カバンのチャックごときとはいえ、身の回りにぬかりを残すような人には思えない。
……けど、よくよく考えたら、人間なんだからそれぐらいは普通にあるに決まってるよね。
神様みたいな、本当に完全な人なんていないわけだし。
ああ、でも。
大っぴらにカバンを開けっ放しにしていたわたしへのフォローのつもりで、嘘をついたってこともあり得るのかな。
うーん、わかんない。
のほほんとした笑みをさりげなく浮かべているナツくんには隙がなくて、その胸の内を探ることは到底できそうになかった。