いつでも一番星
わたしに触れていた指先をそっと離してナツくんは笑った。
わたしを安心させて悩みを聞こうとするナツくんの優しさが滲み出た、やわらかい微笑みだった。
あまりにも穏やかな笑みだから、ついついそのまま事実を話してしまいそうになる。その優しさが特別なものに思えてしまう。
……だけど、勘違いしちゃいけないよね。
ナツくんは、そういう人だから。
ときどき自分の気持ちを笑顔の裏に隠して、人の気持ちを優先してくれるような優しい人。
だからこそ……友達のわたしを心配してくれるんでしょう?
ナツくんの優しさはこれ以上ないってぐらい嬉しかった。
だけど少し冷静になると、これはわたしだから向けられたとか、そういう特別な優しさではないことに気づく。
それはナツくんとの再会にときめいていたわたしの気持ちを少し下降させた。
……それでも、わたしは。
そうやって人に優しく手を差し伸べてくれる、ナツくんのことが――。
「心配してくれてありがとう」
今にもあふれだしてしまいそうな想いを飲み込んで、ナツくんに笑いかけた。
それは決して無理をしたわけではなく、ちゃんと心から自然と生まれた笑顔だった。
好きとありがとうが混ざり合う。
「……あのね、悩みがあるとか、そういうわけでもないの。えっと、か、花粉症で目がかゆかっただけで……」
誤魔化すにはさすがに苦しい言い訳かなとも思ったけど、ナツくんに友チョコを渡せなくて泣いていたなんてとてもじゃないけど言えないから、無理矢理突き通すことにした。