いつでも一番星
あれ……。
ナツくんって、とっくの前に帰ったんじゃなかったっけ?
ここでナツくんと再会したときにもその疑問で驚いたけど、すぐにナツくんに肩を掴まれて質問責めにあったから、すっかり忘れてしまっていた。
それに……友チョコのことも。
渡せずじまいだったわけだけど、まさかこんな放課後の中途半端な時間に再びチャンスが訪れるとは思ってなかった。
せっかく会えたんだから……渡すべきだよね。
友達なんだから、友チョコを渡してもおかしくない関係ってことだし。
また尻込みしそうになる自分に言い聞かせながら、靴に履き替えたナツくんを見上げた。
でも同じタイミングでナツくんもわたしを見てきて、真っ直ぐ交わった視線にドキッと身体が固まってしまう。そうこうするうちに、先に話しかけられてしまった。
「そういえば平岡さん、今帰るってことは部活の帰り?」
「……あ、うん。そうだよ」
何てことない普通の会話を交わしながら、どちらからともなく歩き出す。
ナツくんとふたりきり。そんな状態で隣に並ぶのは気恥ずかしくて、ついつい歩く速度を落として距離を作ってしまう。
それでもナツくんが目ざとく気づいて、わたしの歩幅に合わせて歩いてくれる。ちょっと困った優しさだ。
「……っ、ナツくんは? 野球部って今日休みだけど、どうしてまだ残ってたの?」
ナツくんが隣にいる緊張を紛らわせようと、咄嗟に口を開く。飛び出してきたのは、一番気になっていたことだった。
でも自分で聞いておきながら、とんでもない答えが返ってきたらどうしようって急激に不安に駆られる。