いつでも一番星
「自主練してるなんてナツくんはすごいね。休みの日でも頑張るなんて、すごく努力してるんだね!」
いつもの野球部の部活終了時刻に比べれば、まだ早い時間だけど。
放課後すぐに教室を出てからさっきまで残っていたことを踏まえれば、そこそこ走っていたことがわかる。
その熱心さに感嘆の声を挙げるけど、ナツくんはそれに苦笑しながら、謙遜するように首を横に振った。
「すごくはないと思うけどな。強豪校の人たちは俺らよりもはるかに強いし、その人たちは俺よりももっと頑張ってると思うし。ただ俺は……少しでも頑張っておかないと、今より上達しないからさ。強い人たちに勝つために、頑張るのは当たり前なんだ」
芯の通った声が真っ直ぐ届いてくる。
隣を見遣れば、夕闇に染まった空を見上げているナツくんがいた。
その視線の先には月が昇っているだけで、星はひとつもその輝きを現してはいない。
「……まだまだ、努力が足りないって思ってるよ。もっと強くなるためには、今以上に努力を積み重ねていかないといけないんだ」
ぐっ……と。
ナツくんの拳が強く握られたのが視界の隅に映る。
前を見据えているその横顔には、少し悔しさが滲んでいるようにも見えた。
でもただ悔しがっている様子ではなくて、その思いを抱くことで自分を奮い立たせているような雰囲気だった。
ナツくんは……やっぱりすごいよ。
今だって十分実力はあるはずなのに、決してそこで満足したりしないのだから。
強さの限界を決めないきみは、どこまで強くなれば自分の実力を認められるようになるのかな?
それはわたしが想像しても計り知れないほど……きっと、長い道のりなのだろう。