いつでも一番星


「……でも、平岡さんにそう思ってもらえてるなら、俺の努力も少しは報われてるのかもしれないな」

「えっ?」


校門を抜けようとした直前、ナツくんが歩みを止める。

突然立ち止まったナツくんを追い越してしまい、慌てて振り返ると、何故か笑顔を向けられていた。

夕日を浴びているのは、わたしが好きなやわらかい微笑み――。


「……っ、」

「自分では自分のこと、すごいとか思えないけど。平岡さんの目に映る俺がちゃんと頑張ってるように見えてるなら、努力を感じ取ってもらえてるなら……それでもいいなって思える。今まで頑張ってきたことも無駄じゃなかったんだって、これからも頑張ろうって、そんな気持ちになれるよ」


ナツくんが遅れていた一歩を進んで、ふたりの距離が近づく。


「だから……ありがとう。俺のこと、そう言ってくれて」


向けられた笑顔は穏やかなままで、ナツくんはそう言った。

……ありがとうはわたしの方だよ。

そんなナツくんに憧れて、その姿に勇気をもらってるんだもん。

でも、そんなわたしも、少しはナツくんの力になれていたりするのかな?

わたしのちょっとした言葉で、ナツくんがそう思ってくれるってことは……。


「わたしは……見てるよ。ナツくんが頑張ってる姿。ナツくんの努力が足りないなんて思わないし、なにひとつ無駄なんかじゃないって、わたしは知ってる。どの頑張りも、ちゃんとナツくんの力になってるよ」


無駄なことなんて、きっとひとつもない。

強くなるために必要なのは成功だけじゃなくて、失敗や苦労も自分の糧になるはずだから。


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