いつでも一番星
「あっ……じゃあ、どうぞ」
「うん、ありがとう」
そっと両手を紙袋から離せば、ナツくんが片手で掴んでいたそれを自分のもとへ引き寄せた。
その仕草が大切なものを扱うように優しく見えたのも……きっと、わたしの自意識過剰だろう。
ナツくんはわたしを、友達としてしか認識していない。
そのことは忘れちゃダメで、ナツくんの言動にぬか喜びしないようにと意識するけど……。
「平岡さんから貰えるなんて、すっげー嬉しい!」
……満面の笑顔で、そんなことを言われるものだから。
頭で考えるよりも先に心が嬉しいと悲鳴を上げて、無駄に喜んでしまうんだ。
「そ、そんなに大したものじゃないけど……。喜んでもらえると嬉しいよ」
「喜ぶに決まってるじゃん! それに平岡さんがくれるってことは、手作りだよな?」
「うん、そうだけど……」
「だったら大したものだよ。平岡さんが前にくれたお菓子もおいしかったし。俺、平岡さんが作ったお菓子好きだからさ。だから、貰えてすごく嬉しいんだ」
「それはどうも……ありがとう」
相変わらずナツくんは嬉しそうに笑っているけれど、わたしは上手く笑って返せなかった。
……ああ、やっぱりぬか喜びだったんだ。
ナツくんの言葉の意味を理解して、苦いものがじわりじわりとわたしを蝕んでいく。
やけにナツくんが喜んでくれた理由は、ただわたしから貰えたからじゃない。
わたしが作ったお菓子が好きだから、だったんだ……。