いつでも一番星
「じゃあ、作ったついでに横峰くんにも渡してみたら? そうすればまた、頑張って作ろうって思えるんじゃない?」
バレンタインの日の夜。
お互いのことについて電話で報告しあったときに、無事に横峰くんに渡せたという嬉しい話を聞いた。
しかも初めての手作りお菓子をとても喜んでくれて、渡したその場ですぐにおいしそうに食べてくれたらしい。
そのことを話してくれた茉理ちゃんの浮かれた声は、こっちまで舞い上がってしまうほどに幸せなオーラを放っていた。
あのときみたいに、また横峰くんに喜んでもらえるように頑張る……。
それならまた、お菓子作りに意欲的になるんじゃないかな。
頑張った成果が好きな人の喜ぶ姿だって知っているからこそ、また喜んでもらいたいなっていう思いでなおさら頑張れるような気がするし。
勝手にひとりでそう納得する。
だけど肝心の茉理ちゃんの反応はというと、いまいち乗り気ではないものだった。
「唯斗にも渡す、か……」
「あれ? 渡すの嫌なの?」
「嫌っていうか……なんか。頑張ってもさ、いまいちあいつにはあたしの努力が伝わってない気がして、虚しくなるんだよね。ほら、前に話したでしょう? ホワイトデーの話」
苦い顔で言われて、はっきりと思い出した。
ホワイトデーの日の朝。
登校して教室で会った茉理ちゃんに、横峰くんから貰ったバレンタインのお返しについて仏頂面でいろいろと話されたことを。
部活の朝練に向かう途中で渡されたらしいそのお返しの品は、どうやら茉理ちゃんにとっては不服なものだったらしい。