いつでも一番星
「あいつ、全然なにも感じてないんだから嫌になるよ! 人が初めて手作りお菓子を渡したんだから、普通もう少しお返しにも気を遣うべきだと思うの。それなのにあいつときたら……飴玉1個をお返しとして渡してくるんだからありえない!」
ホワイトデー当日の腹立たしい記憶がありありとよみがえってきたらしく、茉理ちゃんは怒りをぶつけるようにばくばくとおからクッキーを口に詰め込んだ。
その結果空になったお皿を見て、わたしはあはは……と苦笑いした。
「でも、お返しをくれただけでもましなんじゃないかな? 今まではお返しすらなかったわけだし」
茉理ちゃんの話によると、今までは毎年義理チョコを渡してもそれっきりだったらしい。
その頃から茉理ちゃんはちょっとばかり不満を抱いていたらしいけど、自分も渡しているのが安物の義理チョコだから仕方ないと、半ば諦めていたのだとか。
でも、今年は違う。
好きな人を想って、初めて挑戦した手作りのバレンタインのお菓子。
特別な気持ちで作って渡したのだから、それなりにその気持ちを汲み取って、横峰くんにも形で表してほしかったみたいだ。
「そりゃあ、お返しをくれたのはいつもよら進歩してたし、ましだとは思うけど……。一応、あたしが好きでよく食べてるメーカーの飴玉だったし……」
ぶつぶつとそう言った茉理ちゃんの顔からは徐々に横峰くんへの苛立ちが消えていき、最後には照れくさそうに曖昧に笑った顔になる。
何だかんだ言っても、実は……。
「飴玉でも、嬉しかったんでしょう? 横峰くんがくれたものなら」
そう指摘すると、茉理ちゃんはうっと言葉を詰まらせて表情を固まらせた。
だけどやがて観念したらしく、ぎこちなく頷いてみせた。