いつでも一番星
「……もちろん、嬉しかったに決まってる。今までお返しなんてする気がなかったあいつが、初めてくれたんだから」
囁くような小さな声だったけど、愛おしそうに言ったのはよくわかった。
その言葉を聞いて、改めて茉理ちゃんが横峰くんを好きな気持ちが伝わってくる。
好きな人がくれたホワイトデーのお返しだもんね。
たとえ小さかったり少なかったり、一瞬ありえないと思ったとしても、最後にはそれが唯一の特別なものに思えてくる。
茉理ちゃんは怒った素振りも見せていたけど、あれは素直に喜べなかっただけだろう。
きっと、ついさっき言った気持ちが一番の本音だと思うんだ。
「……そ、そういえば、雫もナツからお返しに飴を貰ったんだっけ?」
素直な気持ちを打ち明けて、気恥ずかしそうにリンゴジュースをストローで飲んでいた茉理ちゃんが、話題を自分から逸らしたいといった面持ちでぎこちなく言う。
喋っているうちに渇いた喉を潤そうと、わたしもオレンジジュースを口に含みながら頷いた。
「うん、そうだよ。ちなみにこれが、そのお返し」
一度立ち上がり、勉強机の隅に置いてあった小瓶を持って戻った。
「わあ、かわいいね! 同じ飴でも、ナツのお返しの方がよっぽどいいセンスしてるよ」
球体っぽい形をした小瓶を、茉理ちゃんが感心した様子で見つめる。
その中身はオレンジ色の星形の飴と、カラフルな小粒の金平糖。
まるで小瓶の中に星屑を集めたみたいな……そんな飴と金平糖の詰め合わせが、ホワイトデーのナツくんからのお返しだった。