いつでも一番星


「……もちろん、嬉しかったに決まってる。今までお返しなんてする気がなかったあいつが、初めてくれたんだから」


囁くような小さな声だったけど、愛おしそうに言ったのはよくわかった。

その言葉を聞いて、改めて茉理ちゃんが横峰くんを好きな気持ちが伝わってくる。

好きな人がくれたホワイトデーのお返しだもんね。

たとえ小さかったり少なかったり、一瞬ありえないと思ったとしても、最後にはそれが唯一の特別なものに思えてくる。

茉理ちゃんは怒った素振りも見せていたけど、あれは素直に喜べなかっただけだろう。

きっと、ついさっき言った気持ちが一番の本音だと思うんだ。


「……そ、そういえば、雫もナツからお返しに飴を貰ったんだっけ?」


素直な気持ちを打ち明けて、気恥ずかしそうにリンゴジュースをストローで飲んでいた茉理ちゃんが、話題を自分から逸らしたいといった面持ちでぎこちなく言う。

喋っているうちに渇いた喉を潤そうと、わたしもオレンジジュースを口に含みながら頷いた。


「うん、そうだよ。ちなみにこれが、そのお返し」


一度立ち上がり、勉強机の隅に置いてあった小瓶を持って戻った。


「わあ、かわいいね! 同じ飴でも、ナツのお返しの方がよっぽどいいセンスしてるよ」


球体っぽい形をした小瓶を、茉理ちゃんが感心した様子で見つめる。

その中身はオレンジ色の星形の飴と、カラフルな小粒の金平糖。

まるで小瓶の中に星屑を集めたみたいな……そんな飴と金平糖の詰め合わせが、ホワイトデーのナツくんからのお返しだった。


< 197 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop