いつでも一番星


――「バレンタインデーのお菓子、本当においしかったよ。ありがとう」


ホワイトデーの日。これを渡してくれたときのナツくんの姿が脳裏にくっきりと浮かび出る。


ナツくんからのお返しを貰うことに半分期待、半分不安を抱えた状態で登校すると、昇降口で会ったナツくんにさらりと渡されたんだ。

ナツくんに友チョコを渡せただけで十分だと自分に言い聞かせつつも、友チョコとはいえホワイトデーに何もくれなかったら寂しいなぁ……なんて、昨夜からわたしは悶々としていたというのに。

いとも簡単にお返しを貰えてしまったから、ナツくんと向かい合ったままぽかんとしてしまったっけ。

でもそのあとは、オレンジ色の不織布で包まれたお返しの品をお礼を言いながら渡してくれたナツくんのやわらかい笑顔に、まんまと見惚れていたのだけど。


お返しを貰えて嬉しかった気持ちと優しいナツくんへの胸の高鳴りを思い出していると、目の前の茉理ちゃんが心底安心したように笑った。


「でもほんと、よかったよねー。雫も無事にナツにチョコを渡せて、ちゃんとお返しも貰えて。バレンタインの日になかなか渡せずいる雫を見てるときは、どうなることやらって感じだったから、ほんと今は安心だわ~」

「あはは、あのときは心配かけちゃったもんね……。でも今は自分でもほんと、安心してるよ」


バレンタインの日の苦労を思い出すと、今こうやってホワイトデーのお返しを目の前にして話せていることが、なんだか身に染みる思いだった。


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